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古典図書を読む

トム・デマルコ先生の「ゆとりの法則」を読みました。今更。 「ピープルウェア」や「デスマーチ」「人月の神話」と並ぶ、IT業界にいる者なら一度は読んでおくべき古典の鉄板ですが、 一方でITドカタ業界にいるものには危険思想を蔓延させる敵性図書として購読はおろか口に出すことすら固く禁じられていたりいなかったり。

しかしまぁ頭から順番に読んでいっただけでもITドカタ業界がいかに素敵な業界かという事がよくわかって胸に暖かなものがこみ上げてくるようですね。

まず第 I 章からして 3*3 のスライドパズルに関するたとえ話で、スライドパズルはブロックを動かせるように空きマスが1個あるわけですが、 空きがあるのは無駄なのでここにもブロックを埋めたところ全てのマスにブロックが入った状態になって稼働率 100% !素晴らしい!!って モロに人月から「稼働率」を計算して一喜一憂しているITドカタの発想ですね。 この 12 時から 13 時の間に何もして無いじゃないのは無駄な稼動だ!ここも作業を入れろ!

第 I 章にはこの他に中間管理職を無駄とみなして取り除き、職場の階層を浅くする弊害について触れられていますが、これはITドカタの実態とは一致しませんね。 よかったよかった。 実態は「中間管理職にヒラの作業も兼務させる」なので、頂点の負担はあまり変わらず、中間管理職の仕事がちょっと増えただけで全体の作業能力は向上したという Win-Win な結果になっています。いやぁめでたい。

第 II 章から第 IV 章にかけては人に複数の作業を割り当てる場合、作業を複数の人でパイプライン的に行う場合について説明されていて、 特に後者の「あなた → 私、ハリー → エレーン」の流れで作業成果を引き継いでいく過程が興味深いと思いました。 この本では、「あなた」の作業成果のうち「私」の作業量の方が多ければ、忙しい「私」を横目にすぐ作業が終わってしまったハリーはサボっているように見えるので ハリーは仕事をゆっくりするようになる、という事を問題にしています。

しかしITドカタであれば、このような問題にこそ人日計算のマジックが発動するので心配ありません。 「あなた」の出力に対して「私」の作業が1人日かかるとして、そのときハリーの作業量が 0.6 人日だとします。 ということは「私」の作業を 0.2 日分ハリーが巻き取れば両方 0.8 人日なので余裕で終わるじゃないか!という理論。 まあそんな風に定量的に分割できるならいいですよね、あと分割した後のマージが簡単に出来るならそれでいいでしょうね。

でもITドカタの成果物はたいてい無駄にコピペで作ってるくせに相互依存が激しくて単純に頭から 2 割で分割すればいいってのはあまりないですよね。 そもそも「私」とハリーの作業内容自体が相互依存してて、手分けするんじゃなくて協調動作しなきゃならないという 作業の割り当てからして間違ってることも多々ありますけどね。

あるいは「私」の作業方法が生産性が低いのだと「弊社特製ウルトラスゴイフレームワーク」で生産性を向上しようとします。 このフレームワークは全体に適用しなければならないので、「私」だけではなく「あなた」やハリー、エレーンにも適用されます。 しかし適用した結果、生産性向上どころか単なるゴミ生産装置であることがわかったのですが、もう導入することを承認してしまったので 今更前に戻ることも出来ず、しかも新しい方法ではこの四人が協調して同時進行しなければならなくなってしまいました。 こうしてみんな仲良く残業してチームの結束は深まりましたとさ。

いやはや、200 ページ少々ある本なのですが、最初のわずか 30 ページにしてこの説得力、続きを読み進めるのが楽しみです。


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